はじめに
産業廃棄物処理業を新規に始めたい、あるいは事業拡大に伴って許可を取得したい—— そうお考えの事業者様にとって、最も気になるのは「許可取得までに何を、どの順番で、どれくらいの期間で進めるのか」という点ではないでしょうか。
産業廃棄物処理業の許可は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法) に基づき、都道府県知事(または政令市長)が行う厳格な行政許可です。書類の数も多く、要件も細かいため、独力での申請は想像以上に時間がかかります。
本記事では、許可取得までの流れを 8つのステップに整理し、各ステップで押さえるべきポイントを行政書士の視点で丁寧に解説します。これから許可取得をご検討の方は、ぜひ最後までご一読ください。
1. 産業廃棄物処理業の許可は4種類
まず前提として、産業廃棄物処理業の許可は事業内容により以下の4種類に分かれます。
| 許可の種類 | 内容 |
|---|---|
| 産業廃棄物収集運搬業許可 | 排出事業者から処分場まで運搬する事業 |
| 産業廃棄物処分業許可 | 中間処理(焼却・破砕等)や最終処分を行う事業 |
| 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可 | 爆発性・毒性のある特管産廃を運搬する事業 |
| 特別管理産業廃棄物処分業許可 | 特管産廃を中間処理・最終処分する事業 |
ご自身の事業がどの許可に該当するかが、申請の出発点になります。 ここを誤ると申請のやり直しになるため、最初の段階で専門家に確認することをおすすめします。
なお、今回の記事では産業廃棄物収集運搬業許可についてを中心に進めていきます。
※ 取り扱う廃棄物の種類については、別記事「産業廃棄物の20種類(詳細版)」で網羅的に解説しています。(作成中)
2. 許可申請の全体像(8ステップ)
許可取得までの流れを大きく分けると、次の8つのステップになります。
それぞれのステップを、順番に詳しくご説明します。
STEP1|ご相談・基本事項等の確認(欠格要件含む)
最初のステップは、事業の輪郭を固めることです。許可申請の方向性を決定づける重要な工程ですので、次の項目を順番にヒアリングしていきます。
主なヒアリング項目
- 取り扱う廃棄物の種類(例:汚泥、廃プラスチック類、がれき類など)
- 申請するエリア(収集運搬の場合、積込先と荷下ろし先の両方の都道府県の許可が必要)
- 積替え保管の有無
- 使用する車両・容器の構成(可能であれば車検証の確認)
- 事業場の所在地(賃貸の場合は使用権限の確認が必要)
- 代表者・役員の経歴(欠格要件に該当しないかの確認)
- 講習会修了証の有無
欠格要件の確認(最重要)
このSTEPで特に重要なのが欠格要件の確認です。要件に1つでも該当すると、原則として許可は下りません。
具体的には、申請者または法人の役員等が、次のいずれかに該当する場合は欠格要件に当たります(廃棄物処理法第14条第5項第2号)。
- 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ない者
- 拘禁刑(または禁錮)以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 廃棄物処理法・浄化槽法・大気汚染防止法など環境関連法令に違反し、罰金以上の刑に処せられて5年を経過しない者
- 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 等
欠格要件を一部抜粋しました。より詳細に確認したい場合は、手引書等をご確認ください。
特に注意したいのは、欠格要件のチェック対象は「役員」に限らないという点です。法人の場合、
- 取締役・執行役・監査役
- 相談役・顧問など、業務を執行する社員に準ずる地位にある者
- 発行済株式の5%以上を保有する株主または出資者
- 政令で定める使用人(本店・支店・営業所の代表者)
これらすべてが対象になります。役員以外にも該当者がいないか、初期段階で網羅的に確認することが、申請の差し戻しを防ぐ最大のポイントです。
このSTEPの所要期間の目安
ご相談から基本事項の確認まで、1〜2週間程度。欠格要件に懸念がある場合は、関係書類の確認に追加で時間を要することがあります。
STEP2|講習会の受講申込・修了
産業廃棄物処理業の許可申請には、(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター) が実施する講習会の修了証が必須です。
| 講習会 | 期間 | 受講料 (会場受験) | 受講料 (オンライン受験) | 修了証の有効期間 |
|---|---|---|---|---|
| 収集運搬課程 (新規) | 2日間 | 33,000円 | 27,500円 | 5年 |
| 収集運搬課程 (更新) | 1日間 | 22,000円 | 17,600円 | 自治体により2年 または5年 |
受講者の要件
修了証を取得するのは、原則として次の方です。
- 法人:代表者または役員(監査役を除く)、もしくは政令使用人(本店・支店等の代表者)
- 個人:申請者本人、または政令使用人
法人の場合、業務を執行する立場にない監査役は対象外です。また、役員でない一般従業員が受講しても許可申請には使えませんので、誰に受講させるかは事前に確認が必要です。
講習会の予約に関する注意点
講習会は人気が高く、地域や時期によっては数か月待ちになることもあります。許可取得のスケジュール全体を左右する要素ですので、最優先で予約を確保してください。
- 新規許可申請を行う場合は、原則として新規課程を受講します。
例外として、更新課程でも他の自治体の許可を持っているケースなどで新規許可申請に対応できる場合等もありますが、自治体により対応が異なる可能性がありますので事前確認が必要です。 - 更新課程の修了証の有効期間は自治体によって2年または5年と運用が分かれます。
許可を取得する予定の自治体の取扱いを事前に確認したうえで予約してください。(埼玉県は令和8年1月1日以降の更新申請から5年に延長)。
STEP3|見積書・必要書類のご連絡
事業の輪郭が固まったら、申請に必要な「物的設備」と「添付書類」を具体的に確認していきます。当事務所からは正式なお見積書とともに、お客様にご準備いただく書類リストをご連絡します。
申請までに整えておく必要があるもの
- 運搬車両:自社所有・リース・賃貸いずれも可。ただし使用権限が証明できること。
- 運搬容器:飛散・流出・悪臭防止が可能なもの。
- 駐車場:車両の保管場所。住宅地などの不適切な場所は不可。
⚠️ 車両に表示する「産業廃棄物収集運搬車」のステッカー(マグネット可)は申請後の許可取得後までに揃えれば足りますが、車両自体の用意は申請前に必要です。
主な添付書類(法人の場合)
申請に必要な添付書類は法人・個人でも変わります。代表的なものは以下のとおりです。
■申請者に関する書類
- 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)→一部自治体では原本の提出が不要になり、法人番号提供書を提出で足りるようになりました。
- 最新の定款の写し
- 役員全員(監査役を含む)の住民票(本籍が記載されており、マイナンバーが記載されていないもの)
- 役員全員の登記されていないことの証明書(東京法務局、又は地方法務局本局発行)
※一部自治体では不要になりますので、事前に確認必要です。- 直近3期分の決算書(足りない場合は、又は1回目の決算が確定していない場合は別途資料が必要となることがあります。)
- 法人税の納税証明書
事業に関する書類
- 講習会修了証の写し
- 車両の自動車検査証(車検証)のコピー
- 事業場・駐車場の 使用権限を証する書類(賃貸借契約書など)
- 事業場周辺の見取図・配置図
STEP4|申請のスケジュール確認・申請予約
書類を準備するのと並行して、申請の方法と日程を早めに確定させることが重要です。自治体によって申請の受付方式が異なるため、最初に確認しておく必要があります。
自治体ごとの申請受付方式
申請の受付方式は、おおむね次の3パターンに分かれます。
| パターン | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 完全予約制 | 事前に電話やWebで予約しないと受付不可 | 埼玉県(Web予約システム)、東京都 など |
| 窓口持参・郵送どちらも可 | 予約不要で随時受付 | 一部の自治体 |
| 郵送のみ | 窓口受付を行っていない | 一部の自治体 |
※埼玉県では令和4年10月以降、Web予約システムによる予約が必須となりました(電話予約は不可)。予約カレンダーは申請希望日の4か月前から開放されます。
予約は早めに動くのが鉄則
予約が混み合っており、希望日にすぐ取れず1〜2か月先になることも珍しくありません。書類の作成・収集と並行して、予約だけは早めに押さえておくのが賢明です。
特に更新申請の場合、許可期限の2〜3か月前には予約を取得しておくと安心です。
STEP5|必要書類の収集、申請書類の作成
予約日が確定したら、申請書類の収集と作成を本格的に進めます。当事務所では、お客様にご準備いただく書類と並行して、行政書士が代行取得できる書類を同時並行で進めることで、全体の期間を短縮します。
書類収集の主な取得先
- 法務局:登記事項証明書、登記されていないことの証明書
- 市区町村役場:住民票
- 税務署:法人税の納税証明書
- 自治体:申請書様式(最新版をダウンロード)
申請書類の作成で特に注意すべき3点
① 事業計画書
排出先、運搬先、処分先、収支計画などを、自治体の記載例に従って記載します。書き方は自治体ごとに細かく異なりますので、必ず申請先の記載例を参照しながら作成します。
② 経理的基礎の説明
直近3年間の決算が赤字の場合や、決算書が3年分提出できない場合(事業開始後まもなく1回目の決算書がまだ作成されていない場合等)は、改善計画書や収支計画書の添付を求められることがあります。添付書類のフォーマットは自治体によって変わります。
③ 運搬容器の写真
撮影アングルや背景の指示は自治体により異なります。手引きの指示に従って撮影し、添付してください。
様式は必ず最新版を
書類のフォーマットは自治体(都道府県・政令市)ごとに細部が異なります。隣県でも様式が違うことがありますので、必ず申請先の自治体の最新様式をダウンロードしてください。
STEP6|行政庁との事前相談(必要な場合)・申請
書類が揃ったら、いよいよ申請です。
必要に応じて事前相談を経たうえで本申請を行います。
申請当日の流れ
予約制の自治体では、予約日時に窓口へ持参します。郵送可の自治体では、申請日までに到着するように発送します。
申請時には申請手数料を納付します。決済方法は自治体により様々で、最近は現金よりキャッシュレス決済が増加している傾向にあります。手数料の納付方法は、申請先の手引きで事前に必ず確認してください。
| 申請の種類 | 標準手数料 |
|---|---|
| 産業廃棄物収集運搬業許可(新規) | 81,000円~ |
| 産業廃棄物収集運搬業許可(更新) | 73,000円〜(東京都は42,000円) |
| 産業廃棄物収集運搬業許可(変更) | 71,000円~ |
※ 自治体ごとに金額に差異があります。手数料の金額については自治体発行の手引き書等でご確認ください。
STEP7|審査・補正対応
本申請後、自治体による審査が始まります。
この期間中の対応のスピードが、許可取得時期を大きく左右します。
標準処理期間の目安【収集運搬業(積替え保管なし)】
| 自治体 | 標準処理期間 |
|---|---|
| 多くの自治体 | 約60日(土日祝日・年末年始を除く) |
| 茨城県 | 約90日(土日祝日・年末年始を除く) |
| 埼玉県 | 約43日(土日祝日・年末年始を除く) |
※自治体によって日数の設定が大きく異なります。事前に申請先の自治体への確認をおすすめします。
補正対応はスピードが命
審査の過程で、自治体から補正(書類の不備の修正・追加提出)を求められることがあります。ここで重要なのは、補正が発生すると審査期間が一時停止するという点です。
- 補正連絡が来てから数日〜2週間以内に対応するのが目安
- 対応が遅れるほど、許可取得時期がそのまま遅れる
- 補正内容によっては、追加書類の取得や役員への確認が必要となり、お客様にも素早い対応をお願いするケースがある
当事務所が代行している場合は、補正連絡を受けた時点で速やかにお客様にご連絡し、最短ルートでの対応をできるように尽力致します。
STEP8|許可証の受領
審査をクリアすると、産業廃棄物収集運搬業許可証が交付されます。
許可証の有効期間
- 通常の事業者:5年
- 優良認定業者:7年
許可取得後の運用面での義務
許可を取得して終わりではありません。事業を継続するうえで以下の対応が求められます。
- マニフェスト管理(紙マニフェストまたは電子マニフェスト)
- 帳簿の備付け
- 多量排出事業者からの委託契約への対応
- 更新申請(5年ごと、優良認定業者は7年ごと)
- 処理実績報告書の提出を求められることがある(自治体により運用方法が異なります)
よくある不許可・差し戻し事例
実際の現場で多い「つまずきポイント」をまとめます。
| ケース | 原因 |
|---|---|
| 役員の欠格事由が判明 | 過去の経歴確認が不十分 |
| 経理的基礎の不足 | 財務診断書や、収支計画書等の裏付け資料がない。 |
| 駐車場の使用権限が不明確 | 土地の所有者が第三者なのに、賃貸借契約書等が添付されていない。 |
| 事業計画書の記載が抽象的 | 取扱量・排出場所や、取扱い品目等が曖昧な記載になっている。 |
| 講習会の受講者が代表者でない | 法人の役員でない従業員が受講していた。 |
上記は一例ですが、確認が遅れたり、補正期間が長引いてしまうと、申請が長期化し、許可の受領のスケジュールが変わり、事業開始が遅れてしまいます。
行政書士に依頼するメリット
許可申請を行政書士に依頼することで、次のような利点があります。
- 要件適合性の事前判定:欠格事由・経理的基礎・施設要件を初期段階で精査します。
- 書類作成の正確性:差し戻しによる遅延を可能な限り防止します。
- 申請の予約:事前に自治体への申請の予約を行い、本申請をスムーズに行います。
- 本業への集中:書類作成・役所往復の時間を本業に充てられる
特に、役員が複数いる法人、複数都道府県をまたぐ収集運搬業をお考えのケースでは、専門家に依頼するメリットが大きくなります。
まとめ
産業廃棄物処理業の許可取得は、
| STEP | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1 | ご相談・基本事項のヒアリング | 1〜2週間 |
| 2 | 講習会の予約・受講・修了 | 1〜2か月 |
| 3 | 見積書・必要書類のご連絡 | 3〜5営業日 |
| 4 | 申請のスケジュール確認・予約 | 1〜3営業日 |
| 5 | 必要書類の収集・申請書類の作成 | 3〜4週間 |
| 6 | 事前相談(必要な場合)・申請 | 1〜2週間 |
| 7 | 審査・補正対応 | 約43〜90日(自治体による) |
| 8 | 許可証の受領 | 数日〜1週間 |
| 合計(目安) | 約4〜6か月 |
という、おおむね 4〜6か月 のプロセスです。
途中での差し戻しを避け、スムースに許可を取りに行くためには、事前準備の質がすべてと言っても過言ではありません。
※もちろん自治体の混雑具合等によって期間を超える場合もありますのであくまでも目安で見てください。
ご相談はお気軽にどうぞ
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