「うちは古紙だけ運んでいるから許可は不要ですよね?」 「鉄スクラップの回収業を始めたいのですが、産廃の許可はいりますか?」
こうしたご相談でよく登場するのが「専ら物(もっぱらぶつ)」という言葉です。専ら物に該当すれば産業廃棄物収集運搬業の許可は不要、というルールが廃棄物処理法に明記されています。ただし、「該当する4品目を運べば誰でも許可不要」という単純な話ではありません。
この記事では、専ら物の法的根拠から、実務で誤解されがちな3つのポイント、自治体ごとの運用差まで、産業廃棄物収集運搬業の許可制度に即して整理します。
専ら物とは?(法的根拠)
専ら物とは、**「専ら再生利用の目的となる廃棄物」**の通称で、産業廃棄物収集運搬業を行う際は許可が必要ですが、「専ら再生利用の目的となる廃棄物」のみを対象に業を行う場合はその限りではない、と廃棄物処理法に規定されています。
廃棄物処理法第14条第1項ただし書(産業廃棄物)には、次のように定められています。
「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。」
つまり、再生利用目的の廃棄物だけを業として運搬する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可が不要になるということです。一般廃棄物についても、第7条第1項ただし書に同趣旨の規定があります。
※条文には『廃棄物』と明記されているため、そもそも有価物に該当するものは専ら物ではなく、別途有価物として取り扱われます。
ここで重要なのは、「専ら物」の4品目は法律本文には書かれていないという点です。
具体的な品目は、昭和46年10月16日付の旧厚生省通知(環整43号)で示された行政解釈に基づいています。この通知は廃棄物処理法施行(昭和45年)から半世紀以上、一度も改正されることなく今日まで運用されています。
専ら物の4品目
通知で示されている4品目は次のとおりです。
- 古紙(製紙原料として再生利用)
- 古繊維(反毛・ウエス・再生繊維等として再生利用)
- くず鉄(古銅・非鉄金属スクラップを含む。製鋼原料として再生利用)
- あきびん類(リユースまたはカレットとしてガラス原料に再生利用)
いずれも、廃棄物処理法が制定される以前から再生利用ルートが確立していた品目で、業界の流通インフラを尊重するかたちで例外扱いとされています。
「許可不要」をめぐる3つの誤解
専ら物は実務でも誤解が多い論点です。許可不要だと思って運搬していたら無許可営業として摘発される、という事例は少なくありません。代表的な誤解を3つ整理します。
誤解1:4品目なら誰が運んでもいい
これは誤りです。条文の主語は「専ら再生利用の目的となる」廃棄物の運搬であり、目的に縛りがあります。4品目に該当する廃棄物であっても、埋立処分や焼却処分を目的として運搬する場合は専ら物に該当せず、通常どおり許可が必要です。
つまり「品目が一致すれば例外」ではなく、「再生利用目的で運搬する場合のみ例外」という点も押さえる必要があります。
誤解2:他の産廃と混載してもよい
これも誤りです。専ら物の例外は「専ら再生利用の目的となる廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者」に限られます。
たとえば、くず鉄を回収するついでに廃プラスチック類を一緒に積んでしまうと、その瞬間に「のみ」要件を満たさなくなり、積荷全体が無許可運搬として違反となるおそれがあります。専ら物として運搬する車両は、専ら物以外を混載しない運用を徹底することが必要です。
誤解3:マニフェストも委託契約書もいらないから自由にやれる
専ら物については、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付義務の対象外とされており、書面上の手続きが大幅に簡素化されるのは事実です。委託契約書も法定の必須書類ではありません。
ただし、これは「何の管理もしなくてよい」という意味ではありません。自治体によっては、専ら物を取り扱う事業者に対して独自の届出制度や台帳整備を求めているケースがあります。また、後述するとおり排出事業者側のリスク管理として、再生利用先や取引内容を記録しておくことは強くおすすめします。
排出事業者側のリスクにも注意
専ら物は「運搬する側」だけでなく、「委託する側(排出事業者)」にもリスクがあります。
排出事業者には廃棄物の処理について最後まで責任を負う義務(処理責任の原則)があります。「専ら物だから」と委託したものの、実態として再生利用ルートに乗らず不法投棄や不適正処理が行われた場合、排出事業者側も委託基準違反などで処分・罰則の対象となりうるからです。
判例上も、廃棄物該当性は「物の性状・排出の状況・通常の取扱形態・取引価値の有無・占有者の意思等を総合的に勘案して判断する」(最高裁平成11年3月10日決定・おから事件)とされており、形式的な品目区分だけで判断されるわけではありません。
排出事業者としては、委託先に再生利用先を確認する、引取証や受入伝票を保存する、といった実務対応が望まれます。
自治体ごとの運用差
専ら物の運用は、自治体ごとに微妙な差があります。
専ら物を扱う場合でも「許可は不要、何もしなくてよい」というわけではなく、事業開始前に管轄自治体の廃棄物指導窓口に確認するのが望ましいと考えます。
実務チェックリスト
専ら物として許可不要で運搬を始める前に、以下を確認しておきましょう。
- 取扱品目が4品目(古紙・古繊維・くず鉄・あきびん類)のいずれか、かつそれのみであるか
- 運搬目的が再生利用であり、最終的な再生利用先(製紙工場・製鋼所・カレット業者等)が確定しているか
- 専ら物以外の産廃を混載していないか
- 自治体への届出・報告が必要か
- 排出事業者との間で取引内容(再生利用ルート・取引価格等)が書面で確認できるか
- 廃棄物該当性に疑義がある場合、自治体と事前協議をしているか
まとめ
専ら物は、廃棄物処理法に明記された数少ない「許可不要となる例外」のひとつであり、再生利用業界の歴史的経緯を反映した制度です。一方で、「4品目だから許可不要」と単純に判断すると、無許可営業として摘発される危険があります。
特に、再生利用目的であること、他の産廃と混載しないこと、自治体ごとの運用差を確認することの3点は、押さえておきたいポイントです。
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本記事は2026年4月時点の法令に基づいて作成しています。最新の運用については管轄自治体または専門家(行政書士等)へご確認ください。





