「自社のトラックで廃棄物を運びたいけれど、許可は必要なの?」 「建設現場で出た廃材を運搬するのに許可がいるって本当?」
事業活動で発生した廃棄物を運搬する際、産業廃棄物収集運搬業許可が必要になるケースは意外と多く、知らずに運搬してしまうと重い罰則の対象となります。一方で、自社で出した廃棄物を自社で運ぶだけなら許可は不要、というルールもあります。
この記事では、産業廃棄物収集運搬業許可の制度概要から、許可が必要なケース・不要なケース、無許可営業の罰則まで、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
産業廃棄物収集運搬業許可とは
産業廃棄物収集運搬業許可とは、他人から委託を受けて産業廃棄物を収集・運搬する事業を行うために必要な、廃棄物処理法に基づく許可です。
許可は都道府県知事(政令指定都市の場合は市長)が出します。たとえば埼玉県内で積み込み、東京都内の処分場まで運ぶ場合、埼玉県と東京都の両方の許可が必要です。
許可の有効期間は5年
許可を一度取得すれば永久に有効、というわけではありません。許可の有効期間は5年間で、期限が切れる前に更新申請を行う必要があります。優良認定を受けた業者は7年に延長されます。
許可証に取扱品目を記載する
産業廃棄物は廃棄物処理法で20種類に分類されております。
許可を取得する際は取り扱う品目を申告し、許可証にその品目が明記されます。
たとえば「廃プラスチック類」のみで許可を受けている業者は、「金属くず」を運搬することはできません。
石綿含有産業廃棄物の追加は変更許可申請
事業拡大で取り扱う品目を増やしたい場合や、石綿含有産業廃棄物(スレート板・ビニル床材など、飛散性のないアスベスト含有建材)を新たに取り扱う場合は、変更許可申請となります。
飛散性の「廃石綿等」は別の許可(特管産廃)が必要
なお、飛散性のある「廃石綿等」(吹付け石綿・保温材など)は、普通の産業廃棄物ではなく特別管理産業廃棄物に分類されます。こちらを運搬するには、産業廃棄物収集運搬業許可とは別に「特別管理産業廃棄物収集運搬業許可」を新規取得する必要があります(変更許可では対応できません)。
許可が必要なケース
以下のような業務を行う場合、産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
1. 他社の産業廃棄物を運搬する場合
最も典型的なケースです。他人(他社)から委託を受けて産業廃棄物を運搬する場合、必ず許可が必要になります。
具体例:
- 解体業者が、元請けから委託を受けて解体現場の廃材を運搬する
- 廃棄物処理業者が、工場から出る廃液を処分場まで運搬する
- リサイクル業者が、依頼を受けて使用済み機械を引き取りに行く
2. 建設工事の下請業者が廃棄物を運搬する場合
建設現場で発生する廃棄物の処理責任は、原則として元請業者が負います。下請業者が現場の廃棄物を運搬する場合、それは「他人(元請)の廃棄物を運搬する」ことになるため、産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
「自分で出したゴミを自分で運んでいるだけ」と思いがちですが、法律上は元請の廃棄物を下請が運搬している扱いになる点に注意が必要です。
例外:下請特例(廃棄物処理法第21条の3第3項)
廃棄物処理法第21条の3第3項により、以下の条件をすべて満たす場合は、下請業者が「みなし排出事業者」として扱われ、産業廃棄物収集運搬業許可を持たなくても、現場から出た産業廃棄物を運搬することができます(「みなし排出事業者」とは、法律上、排出事業者と同等の立場で取り扱う特例的な扱いです)。
- 建設工事(建築物等の解体、新築又は増築を除く)又は建築物等の瑕疵の補修工事であって、当該工事の請負代金の額が500万円以下であるもの
- 特別管理廃棄物以外の廃棄物であるもの
- 1回に運搬する廃棄物が1立方メートル以下であるもの
- 当該運搬の途中で保管を行わないもの
- 運搬先は元請業者が使用権原を有する保管場所又は廃棄物処理施設であって、排出場所と同一の都道府県又は隣接する都道府県に存するもの
- 事業場の位置、廃棄物の種類及び量、運搬先並びに運搬を行う期間等を具体的に記載した別紙を作成し、請負契約書の写しとともに携行するもの(省令第7条の2第3項第9号)
なお、この特例はあくまで運搬主体の例外であり、500万円超の工事や解体・新築・増築工事では適用されません。判断に迷う場合は事前に元請・自治体・行政書士等にご相談ください。
3. 産業廃棄物を有償で引き取る場合
有価物か廃棄物かを判断する際は、以下の5つの要素を総合的に考慮する必要があります(いわゆる「総合判断説」)。
これは最高裁平成11年3月10日決定(おから事件)で示された判断枠組みで、現在は令和3年4月14日付 環循規発第2104141号「行政処分の指針について」(環境省廃棄物規制課長通知)で実務指針として明記されています。
有価物・廃棄物の判定5要素(総合判断説)
- 物の性状:性状が安定しており、再生利用に適しているか。
- 排出の状況:継続的かつ安定的に排出され、需要があるか。
- 通常の取引形態:排出事業者と処理業者の間で、一般的に有償取引が行われているか。
- 取引価値の有無:客観的な市場価値があり、有償で買い取られるか。
- 占有者の意思:排出事業者が有価物として売却する意思があるか。
これらの判断要素を考慮し、総合的に判断することが一般的です。
逆有償の取扱い
なお、形式上は排出事業者から処理業者へ「売却代金」として金銭が支払われていても、運搬費・処理費を差し引くと実質的に処理業者に費用を支払っている形になっている場合(いわゆる逆有償)は、原則として廃棄物として扱われます。
有価物と主張されるものでも、行政による総合的な判断により「廃棄物」とみなされる事例もありますので、担当の行政庁に相談するのが望ましいと思われます。
許可が不要なケース
一方、以下のケースでは産業廃棄物収集運搬業許可は不要です。
1.自社運搬(排出事業者自らによる運搬)
自社の事業活動で発生した産業廃棄物を、自社の責任で処分場まで運搬する場合、許可は不要です。これを「自社運搬」と呼びます。
ただし、許可不要であっても以下のルールは守る必要があります。
自社運搬で守るべき2つのルール
・車両への表示義務(社名・「産業廃棄物収集運搬車」の表示)
・書面の携帯義務(廃棄物の種類・量・運搬先などを記載)
マニフェストは委託時のみ必要
なお、マニフェスト(産業廃棄物管理票)は産業廃棄物の運搬または処分を他人に委託する場合に交付する書面です(廃棄物処理法第12条の3)。
自社運搬で完結する場合は交付不要ですが、運搬後の処分を他社に委託する場合は、その委託部分についてマニフェストの交付・運用が必要となります。
これらに違反すると、許可業者と同様に罰則の対象になります。
2. 一般廃棄物の運搬
家庭から出るゴミや、事業所から出る一般廃棄物(紙くず・生ゴミなど、産業廃棄物に該当しないもの)を運搬する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可ではなく、市町村の一般廃棄物収集運搬業許可が必要です。両者は別の許可制度なので混同しないよう注意しましょう。
3. 専ら物(もっぱらぶつ)の運搬
古紙・古繊維・くず鉄・あきびん類の4品目を専ら再生利用の目的で収集・運搬する場合は、産廃収運の許可が不要とされています(廃棄物処理法第14条第1項ただし書)。これらは古くから再生利用ルートが確立されているため、行政解釈により許可不要の例外として扱われています。
ただし、4品目に該当しても再生利用以外の目的(埋立処分等)で運搬する場合や、他の産廃と混載する場合は許可が必要です。また、自治体によって独自の届出制度を設けている場合もあるため、事前確認をおすすめします。
産業廃棄物の20種類とは
産業廃棄物は、廃棄物処理法で以下の20種類に分類されています。
あらゆる業種から出るもの(12種類)
- 燃え殻
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック類
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラスくず・コンクリートくず・陶磁器くず
- 鉱さい
- がれき類
- ばいじん
特定の業種から出るもの(7種類)
- 紙くず(建設業【工作物の新築・改築・除去に伴うもの】・パルプ製造業・紙加工品製造業・新聞業・出版業・製本業・印刷物加工業)
- 木くず(建設業【同上】・木材製造業【家具製造業を含む】・パルプ製造業・輸入木材卸売業・物品賃貸業)
- 繊維くず(建設業【同上】・繊維工業【衣服その他の繊維製品製造業を除く】)
- 動植物性残さ(食料品製造業・医薬品製造業・香料製造業において原料として使用した動植物に係る固形状の不要物)
- 動物系固形不要物(と畜場でと殺・解体した獣畜、食鳥処理場で処理した食鳥に係る固形状の不要物)
- 動物のふん尿(畜産農業)
- 動物の死体(畜産農業)
処理に伴って生じたもの(1種類)
- 上記廃棄物を処分するために処理したもの(コンクリート固型化物など)
許可申請の際は、自社が運搬する品目を上記から特定する必要があります。判断に迷う廃棄物については、行政書士や自治体の窓口にご相談ください。
無許可営業の罰則は重い
無許可営業とは(定義)
無許可営業とは 、都道府県や政令市の許可を得ずに廃棄物の収集・運搬・処分することです。無許可で廃棄物処理業を営業した場合、廃棄物処理法第25条1項1号の定めに従い、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。
産業廃棄物収集運搬業許可を取得せずに業務を行った場合、極めて重い罰則が科されます。
罰則の内容
| 違反内容 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 無許可営業 | 5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科 | 3億円以下の罰金 |
| 不法投棄 | 5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科 | 3億円以下の罰金 |
| 無許可業者への委託(委託基準違反) | 3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれを併科 | 300万円以下の罰金 |
排出事業者側のリスク
委託基準違反による刑事罰
罰則は運搬を行った業者だけでなく、無許可業者に委託した排出事業者にも科されます。これは廃棄物処理法第12条第5項の「委託基準」に違反する行為であり、同法第26条第1号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(またはこれを併科)が科されます。法人の場合は両罰規定(法第32条第2号)により法人にも300万円以下の罰金が科されます。
措置命令(原状回復義務)
さらに、委託先が不法投棄等を行った場合、排出事業者にも同法第19条の5・第19条の6に基づき原状回復の措置命令が出される可能性があります。これは行政処分ですが、撤去・処理費用が数千万〜数億円規模になる事例もあり、刑事罰よりも経済的ダメージが大きいケースも少なくありません。
「許可を持っていると思った」という主観的な言い訳は通用しません。委託前に必ず許可証の現物(または写し)を確認し、保存しておくことが、排出事業者の自己防衛として必須となります。
委託前に許可証の写しを取得し、有効期間内であること・取り扱い品目に該当の産廃が含まれていることを必ず確認しましょう。
許可を取得するための主な要件
産業廃棄物収集運搬業許可を取得するには、大きく分けて4つの要件を満たす必要があります。
1. 講習会の受講
公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する講習会を受講し、修了試験に合格する必要があります。法人の場合は代表者または役員、個人事業主の場合は本人が受講します。
2. 経理的基礎
事業を継続的に行えるだけの財務基盤があることを示す必要があります。直近3期分の決算書などで判断され、債務超過や赤字の場合は追加書類が求められることもあります。
3. 施設(車両・事業場)の確保
産業廃棄物の運搬に適した車両と、車両を保管する事業場(駐車場など)を確保する必要があります。リース車両でも申請可能ですが、契約書類の提出が求められます。
4. 欠格要件に該当しないこと
過去の犯罪歴(廃棄物処理法違反、暴力団関係など)、破産歴などに該当する場合は許可が下りません。法人の場合、役員の欠格事由が会社全体に波及するため、役員構成にも注意が必要です。
許可取得までの期間と費用の目安
許可申請から取得までの期間は、自治体や案件にもよりますが、おおむね2〜3か月が目安です。大体の自治体は標準処理期間を60日(土日祝・補正期間を除く)としています。
しかし埼玉県では、積替え保管を除く新規の許可は43日となっておりますので、事前に自治体に確認する事が望ましいです。
費用の主な内訳は以下のとおりです。
- 申請手数料:81,000円(新規・1自治体あたり)※更新73,000円、変更71,000円(自治体差あり)
- 講習会費用:約30,000円(オンラインや、新規・更新講習等でも変動があります)
- 行政書士報酬:10万円〜20万円程度(行政書士へ依頼する場合のみ、事務所によって金額変動あり)
複数の都道府県で運搬したい場合、自治体ごとに申請手数料がかかる点に注意が必要です。
まずはお気軽にご相談ください
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